眺めてよし、聴いてよし。ジャケ買いしたくなるアルバム特集:70年代ロック編
アルバムはジャケットなどのアートワークを含めて一つの作品。思わずジャケ買いしたくなるような魅力溢れるジャケットの70年代ロック・アルバムを集めました。
70年代におけるアルバム・ジャケット
英米のロック界では60年代後半、ザ・ビートルズの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』やビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』などの登場も契機となってシングル重視からアルバム重視へと潮流が変化。さらにはサイケデリアやアート・ロックの流行もあり、遊び心溢れる独創的なジャケット・デザインの作品も増えていきました。『Sgt...』のようにアルバム全体が一貫したテーマを持っていたり、ザ・フーの『Tommy』をはじめ一つのストーリー仕立てになっていたりするコンセプト・アルバムが人気を博すようになったことも、その流れを勢いづけました。
そして70年代に入ると、より芸術性やテーマ性を重視したプログレッシヴ・ロックが本格的に登場。するとイエスはロジャー・ディーン、ピンク・フロイドはヒプノシス、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターや初期ジェネシスはポール・ホワイトヘッド……というように、アルバム・ジャケットのデザイナーとグループが深く結びつく例も多くなり、ジャケット・デザインへの注目度がいっそう高まっていきました。
時代を彩ったデザイナーたち
70年代に入るとジャケットのデザイナーやイラストレーター、写真家に特に大きな注目が集まるようになりますが、ヒプノシスやロジャー・ディーン、キーフはその筆頭でした。ヒプノシスはストーム・トーガソン、オーブリー・パウエル、ピーター・クリストファーソンから成る英国のデザイン・チームで、『Dark Side of the Moon(狂気)』をはじめとするピンク・フロイドの諸作が代表作。シュールでインパクトのあるデザインに強みを持ち、そのほかにも10cc、レッド・ツェッペリン、UFO、ウイングスらの傑作を含む無数のアルバムに携わりました。他方、ロジャー・ディーンは前述の通りイエスの関連アーティストの作品でよく知られる画家/イラストレーター。80年代以降もイエスのほか、古代と未来のイメージが融合したようなエイジアのジャケット・デザインなどを手がけています。そしてキーフことマーカス・キーフは独特な淡い色味のジャケット写真で有名。ブラック・サバスの初期2作や、英プログレ・バンドのニルヴァーナ(あのグランジ・バンドとは別)のアートワークは特によく知られています。これらの巨匠3人に関してはいずれもあえて代表作をチョイスせず、スタッフお気に入りの2作品ずつをピックアップしました。
このほかにも本特集では日本のイラストレーターである長岡秀星、ザ・ビートルズ関連の作品にも数多く携わったジョン・コッシュ、80年代のデヴィッド・ボウイ作品なども手がけたミック・ハガティ、70年代アメリカを代表するデザイン・チームであるパシフィック・アイ&イヤー、ファクトリー・レコードのデザイナーとして名を馳せたピーター・サヴィルらの作品をチョイス。今回はアルバムの知名度などは度外視し、あくまでスタッフの好みのジャケットという観点で選出してみました。
みなさんの好きなジャケット、思わずジャケ買いしてしまったインパクト抜群の作品なども、コメントからぜひ教えてください。今後もさまざまな切り口でジャケット関連の特集を取り上げていく予定です。
ピックアップアルバム
最初の2枚はキーフの美しい写真を使用したジャケット。こちらは英バンドのカレイドスコープを前身とするフェアフィールド・パーラーのサイケ・フォーク作(70年)で、情緒溢れるこの写真と肝心の音楽とのあいだには少々ギャップを感じるかも。
こちらもキーフがジャケットを手がけた英フォーク・グループ、ダンド・シャフトの2ndアルバム(71年)。荒廃した遊園地のような場所に陽の光が差すジャケットも、男女ヴォーカルをフィーチャーした独創性溢れるサウンドが展開される中身も素晴らしい仕上がり。
ジェネシスを脱退したピーター・ガブリエルが77年にリリースした最初のソロ・アルバムで、ジャケット・デザインはヒプノシス。ほかのヒプノシス作品と比べるとシュールな世界観は薄めながら、青い車体にのみ着色したアートワークは実に美しく印象的。
こちらもヒプノシスがジャケットを手がけたプログレ・バンド、グレイヴィ・トレインのデビュー作(70年)で、夕陽に染まる線路を写した裏ジャケットも印象的。このバンドに関しては、ロジャー・ディーンがアートワークを担当した74年作も有名です。
元ヴェルヴェッツのジョン・ケイルとミニマル・ミュージック界の大家であるテリー・ライリーが71年に発表したコラボ作。大きな邸宅の断面を写したようなジャケット・デザインは、実験的でカラフルなアルバム本編にも見事にマッチ。
シカゴ出身の3人組ジャズ・ロック・グループ、マデュラの2ndアルバム。ヘリから身を乗り出したかスカイダイビングをしているような印象的なジャケットは、デザイン:ジョン・バーグ、撮影:アート・ケインの巨匠2人によるもの。肝心の演奏も素晴らしいお勧めの1作。
こちらはマッギネス・フリントが71年にリリースした2ndアルバムで、情感溢れる美しいジャケットが魅力的。ジョン・コッシュのデザイン、イーサン・ラッセルの撮影という布陣はビートルズの『Let It Be』やザ・フーの『Who's Next』などと同じコンビです。
米ブルース・ギタリスト/シンガーのエルヴィン・ビショップの74年作。リチャード・マンテルのデザイン、アル・クレイトンの撮影によるジャケットは、凝った1枚ではないものの魅力たっぷり。飾り気のないアルバム本編の良さがそのまま伝わってきます。
ここからはイラストやグラフィックを用いた名ジャケットの数々をチョイス。こちらはロジャー・ディーンが手がけた素晴らしい1枚。デンマークのプログレ・バンドが72年に発表した2ndアルバムで、ジャジーな演奏とソウルフルなヴォーカルが織り成す高品質な作品。
ファンタジー性溢れるこのジャケットもロジャー・ディーンが手がけたもので、こちらは英フォーク/プログレ・バンドのマグナ・カルタの73年作。アコースティック・ギターとヴォーカルによるジェントルな音世界が展開される傑作アルバムです。
ファンタジー性のあるイラストのジャケットといえば、すぐ思い浮かぶのがこちら。アン・マリー・アンダーソンというイラストレーターが手がけたこのジャケットは、ポップで遊び心溢れるキャラヴァンのプログレ・サウンドとも最高の組み合わせ。
続いては英パブ・ロック・グループのヘルプ・ユアセルフが72年に発表した3rdアルバム。"影に気をつけろ"というタイトルも意味ありげで、裏ジャケットまで絵本のような世界観が広がっていることからストーリーを想像しながら眺めたくなる仕上がりです。
イタリアの名プログレ・バンド、レ・オルメが75年にリリースした1作。プログレ色の薄い異色作であり、イタリア国外ではほとんどパッケージ化されていませんが、ジェネシスやVDGGの作品で主に知られるポール・ホワイトヘッド作のジャケットは目を引きます。
ボブ・ウェルチとクリスティン・マクヴィーが中核を担いポップ寄りの作風となったグループの8作目。インパクト抜群のジャケットを手がけたのは英デザイン会社のモデュラで、彼らの前作『Penguin』やキャメルのアルバム・ジャケットにも携わっています。
ドアーズがジム・モリソンを失ってから発表した2作目のアルバム(72年)。パシフィック・アイ&イヤーがデザイン、ジョー・ガーネットがイラストを手がけた同作には、レコードのターンテーブルに乗せる組み立て式のゾーエトロープ(回転のぞき絵)も付属していました。
こちらも組み立て式の宇宙船ペーパークラフトがオマケとして付属していた1作。ELOの代表作で、デザインはジョン・コッシュ、イラストは、アース・ウインド&ファイアーやカーペンターズのアートワークも手がけた長岡秀星によるものです。
続いても宇宙的なグラフィックが目を引く1作。プロコル・ハルムでも活躍したギタリスト、ロビン・トロワーの73年作で、ジャケットは映画『スター・トレック』の宇宙船の塗装なども手がけたというポール・オルセンの作品です。
米サザン・ロック・バンドのブラックフットが75年にリリースした1stアルバム。ミック・ハガティがイラストを担当したというジャケットには、"予約なし"を意味するタイトルに合わせてか、綺麗な区画いっぱいにカラフルなテントのようなものが描き込まれています。
イーノが75年に発表した代表作。アート性の高い音楽にぴったりマッチしたジャケットは、彼の友人であるトム・フィリップスが製作した絵画の一部を使用したものだそう。芸術的なジャケットの中には、このように既存の美術作品を利用したものも多々あります。
イアン・カーティス率いるジョイ・ディヴィジョンによるアイコニックな1stアルバム。極めて印象的なこのジャケットを手がけたピーター・サヴィルは、このあとも彼らの後継グループであるニュー・オーダーの『Power, Corruption & Lies』などの名ジャケットを生み出しました。